最近、企業や地方公共団体で発生したセクシャルハラスメント(以下「セクハラ」)被害についての報道が増えています。セクハラが発生した場合の影響は、組織のイメージを大きく傷つけるだけでなく、職場全体のモチベーションにも悪影響を及ぼすことになります。今回は、そうした事態を事前に防止するためのセクハラ研修の内容や実施方法について解説します。
セクハラ研修とは?
法律上の根拠は?
男女雇用機会均等法では、 職場におけるセクハラについて、防止措置として事業主に2つの責務を定めています(法第11条の2)。
まず、セクハラ問題に対して労働者の関心と理解を深めるとともに、ほかの労働者に対する言動に必要な注意を払うために研修をはじめとする必要な配慮をすることが責務とされています。
もうひとつの責務は、事業主自身(法人の場合は役員)に関するものであり、自らもセクハラ問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うことが求められています。
また、セクハラ防止のための責務は事業主だけにあるのではありません。男女雇用機会均等法では、労働者もセクハラ問題に対する関心と理解を深め、ほかの労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる研修などの措置に協力することが責務とされています。
セクハラを事前に防止するために、事業主が率先して問題意識を持ってセクハラ研修を実施し、労働者も主体的に研修に参加すること。これがセクハラ防止措置として法律が定める事業主および労働者の責務の趣旨といえるでしょう。
セクハラ研修が不可欠となる理由
セクハラ防止措置として研修が筆頭に挙げられているのは、文書で規定し、配布するなどの方法で周知しただけでは、十分な効果が期待できないからです。
セクハラには、行為者がセクハラの意図を持って行うものだけでなく、その意図も認識もなく行う「無自覚セクハラ」と呼ばれるものがあります。
客観的な要件を基準にして判断することが難しく、文書で読んで習得することはできません。そこで動画やロールプレイなどの手法も含めた研修で実際に疑似体験することが必要となります。セクハラ研修が必要となる理由はここにあるのです。
セクハラは、発生してからの事後の対策も講じておく必要があります。しかし、それ以上に事前に防止することがリスクマネジメント上、重要であり、セクハラ研修は最も効果的かつ、不可欠な取り組みということになります。
セクハラ研修の内容
セクハラの防止効果を高めるには、加害者となりうる本人だけでなく、職場の管理職が部下の言動に注意を払うことが必要となります。
その一方で実際の事例では、職場の上司が加害者となっていることも少なくありません。こうしたことから、セクハラ研修は管理職向けと一般労働者向けのものと分けて実施することもあります。
一般的なセクハラ研修の内容は次のような項目が挙げられるでしょう。
・職場におけるハラスメントの内容
・ハラスメントが職場にもたらす影響
・ハラスメントの発生要因
・個人間の問題ではなく、職場の問題であることの理解
・会社の方針、防止対策・相談窓口等の制度の理解
管理職向けのセクハラ研修では、これらに加えて、次の項目も内容となります。
・管理職の役割と求められる対応
・ハラスメントと適正な業務指導との区別
セクハラ研修実施のポイント
次にセクハラ研修を効果的に実施するためのポイントについて解説していきます。
前述したように男女雇用機会均等法は、事業主自身、事業主が実施する研修をはじめとする措置、そして労働者である従業員の3つが三位一体となってセクハラ防止の責務を果たすことを定めています。
まず、事業主自身がセクハラ問題に関する理解と関心を深め、トップのメッセージとして職場におけるセクハラ防止・根絶の基本方針を発信しておくことが重要です。そのうえでセクハラ研修を実施しますが、残念ながら、せっかく受講した内容も日常業務に戻れば日々薄れていくことになります。
セクハラを防止・根絶するためには、効果を一過性にするのではなく、企業風土にしていく必要があります。そのためには、セクハラ研修を継続して実施することが効果的です。特に管理職については、管理職研修の一環としてカリキュラムに取り入れることも検討すべきでしょう。
また、受講する従業員がセクハラ防止について日頃から理解し、関心を深めるために、会社としてのガイドラインとマニュアルを策定しておくことをおすすめします。
内容としては、国が示したガイドラインや指針をもとに、自社の事情を踏まえた内容を盛り込むことが考えられます。受講対象は、非正規も含めて全従業員とし、ガイドラインとマニュアルも同様に周知することが大切です。
セクハラ研修の実施方法
セクハラ研修の実施方法は、業務スキルなどの研修と違い、OJT(On The Job Training)には馴染みません。そこで、集合教育としてのOff-JT(Off The Job Training)と非対面のオンライン研修のふたつに大別することができます。それぞれのメリットとデメリットについてみていきましょう。
集合教育
業務を離れて受講者を会場に集めて実施します。集合教育は、さらに外部研修と講師派遣型研修のふたつに分けることができます。
①外部研修
外部のセミナー会社が企画・主催する研修に従業員を参加させて実施するタイプです。
・メリット
専門家から質の高い研修を受けることができます。1回に多くの従業員を参加させることが可能です。
・デメリット
不特定多数が参加している場合、カリキュラムは出来合いであることが一般的であり、自社の状況と合わなければ効果が期待できません。
②講師派遣型研修
自社にセミナー会社から講師を招いて実施するタイプです。
・メリット
質の高い研修を受けることができるのは、外部研修と同じです。受講者が自社の従業員だけであるため、事前に講師と打ち合わせをすることで、自社の状況と親和性のある研修内容とすることが可能です。
・デメリット
社内で会場が準備できなければ、外部の会場を手配する必要があり、スケジュール調整に手間と時間がかかります。
オンライン研修
ICT(情報通信技術)を活用して実施する研修です。パソコンあるいはスマホ・タブレットを使用して遠隔で非対面で行うことができます。オンライン研修は、Web会議システムとeラーニングの2種類に分けることができます。
①Web会議システム
Zoom、TeamsなどのWeb会議ツールを使用するタイプです。
・メリット
ICTツールがあれば、どこからでも受講でき、移動時間と交通費がかかりません。資料は画面に表示することができるため、印刷の手間やコストは不要です。
・デメリット
非対面ですが、リアルタイムで講師に講義してもらう必要があり、そのための費用は必要となります。また、インターネット回線の状況に影響されるため、通信が不安定になった場合は、研修が中断することもありえます。
②eラーニング
あらかじめ制作された動画を配信サーバーにアップロードし、受講者が視聴するオンデマンド配信が一般的です。
・メリット
受講者が自分の都合のよいタイミングで受講することができます。一時停止や巻き戻し、繰り返しの視聴も可能です。
・デメリット
リアルタイムではないため、受講中に疑問が生じても、講師からすぐに回答を得ることはできません。
以上、集合研修とオンライン研修の2つのタイプについて紹介しましたが、セクハラ研修を実施する場合、両者を組み合わせることも考えられるでしょう。
セクハラ研修におすすめのツール
セクハラ研修の概要について、その必要性、カリキュラムの内容、実施のポイント、実施方法などを解説してきました。
実施方法には、それぞれメリット・デメリットがありますが、対費用効果という点から最近では、オンライン研修を活用する企業が増えています。コストを抑えながら質の高いセクハラ研修をオンラインで行うなら、「manebi ラーニング」がおすすめです。
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