チームや部署、さらには企業全体ですべての社員がリーダーシップを持ち、業務にあたるシェアド・リーダーシップ。少子高齢化の影響により多くの業種で人材不足が慢性化しているなか、人材育成や生産性向上につながるとして注目を集める組織体制の一つです。
本記事では、シェアド・リーダーシップの概要、求められるスキル、導入のメリット、実際に活用する際の問題点と解決のポイントについてお伝えします。社員のリーダーシップ向上施策を検討している人事・研修担当の方はぜひ参考にしてください。
シェアド・リーダーシップとは
シェアド・リーダーシップとは、社内のチームや部署などでメンバー全員がリーダーシップを発揮し、リーダーの役割を共有する組織体制を指すもの。それぞれが得意な分野を生かし、あるときはリーダーとして、あるときはサポート役として、役割を柔軟に入れ替えながら業務を進めていきます。
一般的な組織体制では、チームや部署にリーダーは一人で、全体をまとめるのが基本です。しかし、シェアド・リーダーシップでは、上司がリーダーを担うのではなくメンバー全員がリーダーであるという自覚を持って業務にあたります。
ただし、最終的な方向性の判断や取捨選択を行う際、複数のリーダーがいると意見がわかれてしまう場合も。そのためシェアド・リーダーシップを導入しても、チームや部署のパフォーマンスを最大化できる正式なリーダーは必要です。
シェアド・リーダーシップでは、正式なリーダーを中心としながら各チームメンバーがリーダーシップを発揮し、同時にフォロワーとしての役目も果たします。
関連するリーダー研修については、「リーダー研修の内容を解説!効果を引き出すポイントとは」を参照ください。
シェアド・リーダーシップと似た用語の違い
少子高齢化の影響による人材不足を補う手段として、シェアド・リーダーシップのほかにもいくつかの組織体制が存在します。そのなかでもシェアド・リーダーシップに似た用語として存在するのが「サーバントリーダーシップ」と「オーセンティックリーダーシップ」です。ここではそれぞれの概要やシェアド・リーダーシップとの違いを解説します。
サーバントリーダーシップとの違い
サーバントリーダーシップとは、支援型リーダーシップとも呼ばれるもので、チーム、部署内の一人がリーダーの役割を担う組織体制です。一般的なリーダーと異なるのは、リーダーが先頭に立ち、チームや部署を引っ張る形ではない点。リーダーはサポートに徹し、メンバーのスキルを最大化させることがサーバントリーダーシップの特徴です。
- シェアド・リーダーシップ:メンバー全員がリーダーシップを発揮し、互いにサポートし合う特徴がある
- サーバントリーダーシップ:リーダーがチームメンバーをサポートする
オーセンティックリーダーシップとの違い
オーセンティックリーダーシップとは、カリスマ性を持ったリーダーに自分を重ねて真似るのではなく、自身の価値観や信念にもとづきリーダーシップを発揮し、組織をまとめる体制です。サーバントリーダーシップと同様にリーダーは一人であるものの、リーダーがすべての決定権を持ってものごとを進めるのではなく、メンバー一人ひとりが主体的に行動して業務にあたります。
メンバー一人ひとりが主体的に行動する点では、シェアド・リーダーシップと変わりません。ただし、シェアド・リーダーシップは、メンバー全員、つまり組織としてリーダーシップを発揮します。
これに対しオーセンティックリーダーシップは、メンバー一人ひとりが個人としてリーダーシップを発揮し、それを最終的にリーダーがまとめるといった点が異なる部分です。
シェアド・リーダーシップに必要な4つのスキル
シェアド・リーダーシップを導入し、成果を高めるのに必要なスキルは以下の4つです。
- コミュニケーションスキル
- 問題解決力
- 実行力
- 意思決定力
コミュニケーションスキル
リーダーには業務にかかわる問題点や課題点、目標などを周知し、メンバーから課題解決につながるアイデアを引き出す役割があります。そこで欠かせないのがコミュニケーションスキルです。
シェアド・リーダーシップでは、メンバーの誰もがリーダーになる可能性があります。そのため、普段からメンバー間でのコミュニケーションをとっておくことが重要です。自身がリーダーとなったときには迅速かつわかりやすくメンバーに問題点や課題点、目標を伝えることによって、業務をスムーズに進めていけます。
問題解決力
問題が発生した場合、リーダーは迅速に原因を究明し、解決するための手段を講じなければなりません。問題解決に時間がかかれば業務を滞らせてしまうだけではなく、場合によっては会社に大きな損害を与えてしまうリスクもあります。そのため迅速な問題の解決はリーダーに欠かせないスキルの一つです。
問題解決力に優れたリーダーであれば、万が一の事態であっても迅速かつ冷静な判断で原因の究明、解決手段の指示を出せます。シェアド・リーダーシップでは、個人が得意分野を生かし、アイデアを出し合い、互いをサポートしあうことで迅速な問題解決が可能です。
実行力
各メンバーがモチベーションを維持して業務にあたるには、リーダーがスピード感を持って指示を出し、業務を進めていく実行力が欠かせません。リーダーの指示が遅れたり、実行までに時間を要したりすれば、メンバーのモチベーションが下がり、業務の質が落ちてしまうリスクもあります。業務の質を損なえば競合他社に先を越され、企業価値の損失につながるでしょう。
シェアド・リーダーシップの成果を高めるうえで実行力は重要な要素の一つ。それぞれがリーダーシップを発揮して与えられた役割をスピーディーにこなしていくことが、業務の質向上につながります。
意思決定力
ビジネスではさまざまな局面でリーダーの判断が求められるものの、すべての局面で正解を出すことは困難です。ただし、状況にあわせて柔軟な計画の変更ができれば、不測の事態が起きてもリスクを最小限に留められます。
そのためリーダーは周囲の状況を把握し、判断が必要な場面では迅速かつ適切な意思決定を行わなければなりません。シェアド・リーダーシップでは、組織を取り巻く環境やメンバーの進捗状況を理解し、迅速な意思決定が各メンバーに求められます。
シェアド・リーダーシップを活用する4つのメリット
自社にシェアド・リーダーシップを導入し、活用することで4つのメリットを得られます。
- チーム・組織のモチベーション向上につながる
- 組織全体の生産性向上が期待できる
- 人材育成に生かせる
- 新たなアイデアが生まれやすくなる
チーム・組織のモチベーション向上につながる
シェアド・リーダーシップは、チームや部署のメンバー全員がそれぞれの得意分野でリーダーシップを発揮し、互いをサポートしながら業務を進める組織体制です。そのため、リーダー以外はサポートの役割に徹する一般的な組織編制に比べ、各メンバーが高いモチベーションを持って働けるようになります。
リーダーとなる場面では、自身の意思をメンバーに伝えて行動するため、自律的に活動する喜びにつながるでしょう。個々が意欲的に業務に取り組むようになるため、チームや組織のモチベーションが向上するのも、シェアド・リーダーシップのメリットです。
組織全体の生産性向上が期待できる
シェアド・リーダーシップでは互いに足りない部分をメンバー同士で補いながら業務に取り組めるため、生産性向上が期待できます。それぞれが自分の役割を認識しているため、誰がリーダーシップをとるか、サポートに回るかが明確になり迅速な問題点の把握、解決のための意思決定、実行が可能です。
意思決定から実行までの時間が大幅に削減され、メンバーは高いモチベーションを維持したまま業務を進められるようになるため、生産性の向上につなげられます。
人材育成に生かせる
シェアド・リーダーシップの活用によりメンバーの育成をスピーディーに行うことが可能です。一般的な組織編制では、つねに部下としてリーダーの指示に従い業務を進めていきます。
シェアド・リーダーシップでは、役職は関係なく状況に応じて自身がリーダーシップを発揮していかなければなりません。実践のなかでリーダーとしての役割や任務、責任を学べるようになるため、短期間でリーダーとしての資質を得られる可能性が高まります。
新たなアイデアが生まれやすくなる
誰もがリーダーになる可能性があるシェアド・リーダーシップではリーダーとしての責任を求められるため、自然に自主性が身につくでしょう。また、業務の問題点や課題点、目標などを共有することで、メンバー間でのコミュニケーションが活発になり、そのなかから、新たなアイデアが生まれやすくなります。
シェアド・リーダーシップ活用で生じる2つの問題点
さまざまなメリットを持つシェアド・リーダーシップ。しかし導入すれば必ず成果を得られるわけではありません。シェアド・リーダーシップを活用する際は、各メンバーがフォロワーシップや組織目標を理解しておくことが大切です。ここでは、具体的な2つの問題点と解決策を解説します。
フォロワーシップを理解してもらう必要がある
フォロワーシップのフォロワーとは、チームや部署などの組織を率いるリーダーのもと、業務を進めていくメンバーを指します。そして、フォロワーが組織やリーダーのために主体的に考え、行動するのがフォロワーシップです。
シェアド・リーダーシップでは、誰もがリーダーであり、互いがフォロワーであるため、すべてのメンバーがフォロワーシップを理解しなければ、高い効果が期待できません。すべてをリーダー任せにするのではなく、一人ひとりがリーダーシップを意識して行動することで、シェアド・リーダーシップの効果が発揮されます。
各メンバーが組織の目標を理解する必要がある
シェアド・リーダーシップでは、一つのプロジェクトのなかでも状況に応じてリーダーが変わります。各メンバーが組織の目標やゴールを理解していない場合、リーダーによって判断や意思決定の軸が変わってしまいます。これではシェアド・リーダーシップのメリットを生かすことはできないでしょう。
各メンバーが組織の目標を理解し、判断軸をブレないようにするには、コミュニケーションを欠かさないことが重要です。定期的なミーティングの開催、社内SNSやビジネスチャットなどのコミュニケーションツールの活用などでつねに最新情報の共有を心がけましょう。
シェアド・リーダーシップを活用する5つのポイント
シェアド・リーダーシップを適切に活用するには次の5つのポイントを意識することが重要です。
- 経営陣の理解
- ビジョンの共有
- メンバーへの権限移譲
- 仮説と検証の繰り返し
- 人材・社員研修の実施
経営陣もシェアド・リーダーシップを理解する
シェアド・リーダーシップを社内に定着させるには、経営陣がシェアド・リーダーシップを正しく理解することが欠かせません。一般的な組織体制の考え方では、上司がリーダーとして部下をまとめて業務を進めていくのが基本です。しかし、経営陣がこの考え方を改めないとシェアド・リーダーシップを定着させるのは難しいでしょう。
まずは経営層が組織のモチベーション向上、生産性の向上、迅速な人材育成などシェアド・リーダーシップがもたらすメリットを理解することが必須です。そのうえで、メンバー全員がリーダーシップを発揮して業務を進めることを歓迎する環境を積極的に支援することが求められます。
ビジョンを共有し方向性を合わせる
メンバーそれぞれが主体性を持ち、リーダーシップを発揮するシェアド・リーダーシップは、それぞれのビジョンがバラバラではうまく機能しません。そこで重要になるのがビジョンの共有によってメンバー全員が同じ方向を向くことです。
ビジョンを共有する際は、わかりやすく簡潔な表現で伝えることが求められます。また、各メンバーに対し同じタイミングで伝えることも重要です。伝える人やタイミングが変わると伝言ゲームのように伝えたかったビジョンが正しく伝わらない可能性があります。全員に向けてビジョンを共有し、方向性をあわせましょう。
各メンバーに権限を与える
リーダーになっても権限がなければ最終的な判断はできません。すべてのメンバーがリーダーシップを発揮できるようにするには、各メンバーに権限を与えることが必要です。
ただし、新入社員や若手社員では、権限を与えられても思うようにリーダーシップを発揮できない可能性が考えられます。シェアド・リーダーシップを導入する際は、上司が定期的に新入社員や若手社員に対して個人面談を行い、フォローしていく体制を整備するとよいでしょう。
仮説と検証を繰り返す
新入社員や若手社員だけでなく、中堅社員やベテラン社員でも判断ミスや意思決定に迷いが生じてしまうことはあるでしょう。しかし、それでシェアド・リーダーシップを止めてしまってはメンバーや企業の成長につながりません。
シェアド・リーダーシップを定着させ、メンバー全員がリーダーシップを発揮させるには、仮説と検証を繰り返してリーダーとしてのスキルアップを目指す必要があります。具体的な手段としては、OODAループの活用が有効です。
OODAループとは、観察(Observe)、状況判断(Orient)、意思決定(Decide)、実行(Act)、振り返り(Loop)を繰り返して成果を高める手法のこと。メンバー全員がOODAループを意識して業務を進めることで、リーダーとしてのスキルアップが可能です。
人材・社員研修を実施する
シェアド・リーダーシップを導入したからといって、すぐに成果を高めるのは困難です。経営層の理解と同時に、現場でも、シェアド・リーダーシップの基本概念の理解、実施方法の確認が欠かせません。基本概念や実施方法などを理解するには人材・社員研修の実施が有効です。
人材・社員研修で多くの経験や知識を効率的に吸収できるでしょう。さらに高い効果を実現させるには、集合研修とeラーニングの併用をオススメします。まずは人材・社員研修で基本概念の理解や実施方法の確認を進め、実践を行いながらeラーニングで復習をすれば、より深く理解できるでしょう。
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シェアド・リーダーシップを活用するにはオンライン研修がオススメ
シェアド・リーダーシップとは、社内のチームや部署などでメンバー全員がリーダーシップを発揮し、リーダーの役割を共有する組織体制を指します。一人のリーダーがメンバーに指示を与え業務を進めるのに比べ、メンバー全員が高いモチベーションを持って自主性を発揮することが可能です。その結果、生産性向上や人材育成の実現につなげられます。
ただし、いきなりシェアド・リーダーシップを導入しても、社内に定着させるのはかんたんではありません。シェアド・リーダーシップをさらに深く理解するのにオススメなのが、eラーニングと集合研修の活用です。eラーニングで学んだことを集合研修で実践すれば、より高い研修効果が期待できるでしょう。
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